カンクン/ハバナの往復に使ったキューバ国営のCubana航空。当然、リコンファームが必要。オフィスは新市街にある。ちょうど暇だし、旧市街からでも海沿いのMaleconを通れば迷うこともない。回復し始めた天気の中、のんびり歩いて行ってみる。ハリケーンの時は波が堤防を乗り越えて襲ってくるというMalecon。潮風による風化に追いつかないらしく、通り沿いの建物は塗装がはげ、壁が崩れ、くすんでいる。そちらをあまり見ないで、海側だけ見て歩く。
写真はMaleconの堤防でポーズをとっていたペリカン。人を恐れない。カメラに撮られると満足げな表情さえする。
歩いている途中で気づいた。きょうは日曜日。当然、Cubanaのオフィスも休み。この旅で初めて新市街に来たので、せっかくだからとそのまま新市街を観光する。コロニアルな建物が並び細い路地の組み合わせの旧市街とは違い、コンクリート製の高層ビルが並び、広い道路が多い新市街。何となく新鮮だ。
何はともあれ、旧ヒルトン・ホテル、現Hotel Habana Libreの先にあるハバナ大学に行ってみる。正面に大きな階段があるのは少し違うが、何となく雰囲気がコロンビア大に似ている。「我が母校」を意味するAlma Materとシンボルの女神の像もある。
しかし警備員らしき人が、身振り手振りで階段を上るなと言う。Alma Materを撮るだけだとこちらもカメラを振りかざして言ってみるものの、それもいけないという。日曜日だから構内に入れないというのか。そんな大学があるのか。写真にばんばん撮ってもらって宣伝してもらう方がずっといいと思うのだけれど。
革命広場に行ってみる。キューバ独立の父ホセ・マルティの像が立っている。しかしそこも日曜日でお休み。近づくなと警備員が教える。日曜日こそ一般に開放して、キューバの国民にも革命精神を伝えるべきではないのかと思うのだが、そうは考えないらしい。
キューバではアジア人は珍しい。キューバ人自体、先住民はスペイン植民地時代にほぼ根絶やしにされてしまい、入植者の白人、労働力としての黒人、そしてその混血で構成されている。これらの間では人種差別がほぼないとされている。黒人が少しは肩身の狭い思いをしているアメリカより、こっちの方がよっぽど進んでいるのは確かだ。
それはしかし、この3グループ間で差別がない、というだけで、そのカテゴリーに入らないものに対する好奇心はものすごい。
旧市街にせよ新市街にせよ、歩いていると「チノ!」「チナ!」と叫ばれる。「中国!」もしくは「中国人!」ということだ。ポイントは「?」マークではなく「!」で叫ばれるということ。最初は「No, Japon(ハポン)」などと答えていた私だが、それがあんまり頻繁にあるのでしまいにはイライラしてくる。
確かに街を歩いている一般の人、そして観光客を入れてもアジア系の顔はほとんどない。日本人は来ても徒歩で歩くことが少ないのか、ハバナで日本人を見かけることはほとんどなかった。中華街に行っても、店は中国風でも働いているのはほとんどキューバ人。これもニューヨークのChina Townとまったく違う。
男性女性を問わず、決めつけた調子で1日に何十回も「中国!」。そんな状況は何だかおかしい。キューバ人が合法的に見られるテレビは政府系の2チャンネルだけ。しかも時間が限られている。その中で中国のアニメをやっていた。だからキューバ人にとってはアニメでしか知らないアジア系の人物が街を普通に歩いていることが普通でないらしい。だから「中国!」
珍しく「ハポン?」と聞いてくるかと思えば、次に出てくる言葉は「ハマキ?」。どうしてこういう言葉だけ知っているのか。だれかが教えているのだろう。情報が統制されている国だから仕方ないが、アジア系の人物に対するこの偏った認識は何とかしてほしい。
ネパールでも散髪に挑戦した私。ここキューバでもやってみることにする。
繁華街にある美容室。そこに飛び込んでハサミの身振りをして、髪を切って欲しいことを伝える。担当した黒人女性は「日本人が髪を切ってほしいと言っている」と周りの客やスタッフに誇らしげに伝えている。彼女の家の今夜の夕食のテーブルの話題は、きっとこの珍しい体験のことになるだろう。
いきなり椅子に座らされたと思ったら、何の前触れもなくいきなり切り始めた。おいおい、髪形の相談とかどれくらい切ってほしいかとか、それぐらいはやってもいいんじゃないのか。まったく言葉が通じなかったネパールでもあったぞ、それくらい。もしかして髪形は1つしかないのか。
ばっさばっさと切り進む。なぜかこの女性、鼻息が荒い。興奮しているわけではないのだが、「ふー、ふー。ふふー、ふー」とうなっている。そういう癖らしい。
10分ほどで完了。頭が軽くなった。デップの代わりに水のりのようなものをつけられる。とにかくこちらも珍しい体験になった。
夕食は近くのオープンカフェで。しかしハバナ流。たっくさんメニューに載っているが、結局あるのはそのうち3種類だけという。しかしその3種類が何を指すのかさっぱり分からない。Lonely Planetの巻末にある食事用のスペイン語をボーイと2人でのぞきこみながら、やっと豚、鶏、小エビの料理ができることが分かる。鶏を頼むと、半身をそのまま空揚げしたような巨大なものがやってきた。美容室のおばちゃんじゃないが「ふーふー」言いながら食べる。
横のテーブルには、ドイツ人男性が5人ほどと、それとちょうど対応するキューバ人の若い女性の一団がいて酔っ払い、嬌声をあげていた。そうは考えたくないが、買春と売春のグループだ。革命直後は厳しく禁止された売春だが、観光客が増えるにつれて売春もまた当たり前になっているという。最初に泊まったホテルの門番も女性を宿泊客に紹介していたぐらいだ。ドイツ人が一番いい客だとも聞いた。旅の恥はかき捨て、というのは日本だけではない。
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