機体はロシア製イリューシン62。しかも自由席。というか先着順に好きな席に座ってよい。学生時代、アエロフロートで同じようなことがあると聞いたことがあったが、実際に自分が経験するのは初めて。外がよく見えるよう、翼の上を避けて窓側に座る。写真は機内サービス。乾いた薄いサンドイッチにチョコレート味のお菓子。それにCristalというキューバのビール。味は軽い。
午後5時過ぎ、ハバナ着。着いたころには夕闇で、空港を出るころには真っ暗だった。入管ではかなり厳しい目のおじさんがじろりと調べてくれたが、何の問題もなく通過。アメリカ関係の旅行者のパスポートには入国のスタンプすら押さない親切さ。入国スタンプがなければキューバに入国した事実がパスポートに残らない。アメリカに再入国する際にトラブルにならないようにというキューバ政府の配慮だ。
ギターのベルギー人と一緒にタクシーに乗って市内まで行くことにする。本来なら私には迎えが来ていることになっているのだが、航空券と同じく、この部分の手配をしていなかったらしい。怒りを新たにしながら、予約してあったHabana Vieja(Old Havana)地区のホテルにチェックイン。疲れて何もする気がなくベッドに倒れ込んでいたら、旅行社から電話が入った。「大丈夫か」というので「大丈夫じゃない」と答えると、「それでもハバナに来れたのはラッキーじゃないか」。なんですとーーーー!
力なく乾いた笑いでそれに応じる。辛うじて夕食をパスタで済ませ、長く疲れた一日を1秒でも早く閉じようとベッドへ。あ〜しんど。
Tips
(1)アメリカとキューバは国交がない。つまり普通の人が乗れる直行便はない。メキシコやカナダ、カリブ海の島々を経由することになる。アメリカ人はその名も「Trade with Enemy法」という法律により、キューバを訪問すること、キューバで金を使うこと、キューバの物品を輸入、所持することを禁じられている。
そのため、アメリカの普通の旅行社ではキューバ行きを扱っていない。イギリスやフランス、カナダの旅行社を使うか、メキシコやキューバの旅行社を使うことになる。欧米の旅行社を使っても、結局はキューバの会社と提携しているだけのことも多いので最初からキューバの旅行社と交渉したほうが話が早い。キューバの旅行社を使う場合、彼らは包括的なパッケージ旅行を提案しがち。たとえば空港への送迎とかキューバ国内の移動などもすべて含んだものを提案してくるので、いらないものをそぎ落とす作業が必要。
(2)「地球の歩き方」はまったく役立たず。ハバナ市内の地図にしても、ViejaとCentroの区別さえなかった。これは結構、致命的な欠点。これまで役に立たないと分かっていても記念に同書を揃えてきたが、それもここまで。今回はLonely PlanetのHavana編(14.99ドル)をお供に。地図はこれが一番詳しい。ただ街の情報、たとえば食事やエンターテイメントならTime OutのHavana編の方が詳しいし、カラーだから読みやすい。旅行前に探したが、近所の本屋数軒では見つけられなかった。
(3)どんなガイドブックを見ても、アメリカでの留学生がキューバを訪れる際のことについては何も触れられていない。Lonely Planetにしてもアメリカ人が中心読者なので、アメリカにいる異国人がキューバを旅行する際の注意点には何も触れられていない。キューバの物品を所持することすら禁じている法律が存在する以上、厳格に言えば留学生もその法律に従わなければならない。つまりF-1ビザ剥奪の恐れがないわけではない。ただ後述するように、理論と実際は違う。「歩き方」は日本にいる日本人読者が対象だから、なおさら何も書かれていない。結論的に言えば、留学生がキューバに旅行しても「実質的」には何もない。直行便がないことが、この点については有利に働く。キューバ政府もその点に配慮した入管政策を採っている。
(4)キューバでは米ドルがそのまま通用している。特に観光客が行動する範囲ではわざわざキューバ・ペソに両替する必要もない。この点、アメリカからの旅行者は楽でいい。Lonely Planetにはアメリカのコインも流通しているとあったが、見聞きした範囲ではコインは受け付けられていなかった。またアメリカの銀行やクレジットカード会社発行のトラベラーズ・チェックやクレジットカードは受け付けてもらえない。当然、前述のアメリカの法律により決済されないからだ。日本で発行されたクレジットカードなら、それがたとえVisaでもMasterでも大丈夫。しかしかなり高額にならないといちいち受け付けてもらえないことも。目安は100ドル以上。そんなに使うのはホテルかcigarショップぐらいだろう。
(5)街角には警官などが見張りをしているので、治安はかなりいい。特に不安を感じることはなかった。ただ世界の常識の範囲で警戒するのは当たり前。日本と同じ感覚でいてはいけないのは当然。自分の身は自分で守るのが旅行の常識。
(6)当然、英語よりもスペイン語の世界。スペイン語で話す努力をした方が旅行が楽しくなる。
(7)多いのはカナダ人、ドイツ人、そして中南米からの旅行者。キューバでカナダ人は、世界の他の地域での日本人のように思われている。「騒々しく、買い物に血道を上げ、そして団体行動を好む」
(8)ハバナはスペイン語ではLa Habana。主要部は東から植民地時代からの建造物が残るVieja(旧市街)、以前の政治の中心地で現在は庶民の街Centro、アメリカ統治時代から革命(1959年)前まではギャングとギャンブルの街、今は都会的なVedadoに分かれている。物価はCentroが一番安い。両方に行きやすいCentro、特にVieja寄りに宿を取るのが一番賢い。普通にパッケージツアーに申し込むと、Vedadoのホテル群に押し込められることが多い。Vedadoには観光名所がそれほどあるわけでもないから、そこから毎日、ViejaやCentroに「通う」はめになる。
(9)オープンな場での政治についてキューバ人との論議はご法度。それは旅行者というより、その質問を受けた現地の人を危険にさらすことになる。
(10)アメリカの経済封鎖を受けて物資が不足しているのであって、貧しいわけではない。貧しいとしても金銭的/物質的にであって、精神的にではない。違う文化、違う風土、そして違うシステムの国にいるということを忘れないようにしたい。と、自分に言い聞かせた旅。
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