1月1日
これって何ですか
Lonely Planetで評価の高かった「Hanoi」という店を探して歩く。ちょうどHabana Vieja(旧市街)とCentroの境目ぐらいにある店。安くてうまいらしい。Hanoiというからヴェトナム料理かと思いきや、まるっきりのキューバ料理だった。ま、特に腹が減っているわけでもないので店頭のメニューと料金表をもながめながら、「今度今度。じゃ、次はどこに行くかな」と地図を店の前で広げていたら、黒人女性が「レストランを探しているのか」と声をかけてきた。いや、Casa Particularだと答えると、それなら知っているから着いてこいという。
Casa Particularは、部屋が余っている人が政府の許可を受けたうえで旅行者に貸し出すもの。部屋の所有者はその代わりに月額200ドル程度を国に収めないといけない。宿泊料はハバナ市内で20ドルから25ドルが相場。ほかの国のようにドミトリー式の安宿などがないので、バックパッカーなどはこのCasa Particularを探して宿泊している。正式の認可を受けたCPは青い三角のシールがドアに貼ってあるはずなのだが、ハバナ市内ではあまり見かけない。
宿泊代は同じレベルが多いのだけれど、ロケーションと設備は千差万別。ホットシャワーの有無、トイレが独立しているか共用か、食事は入っているのか、もし必要なら取れるのかどうか。いいCPを見つけられたら旅費も安くつくうえ、キューバの一般家庭に下宿しているような気分も味わえる。
街を歩いていると「1泊15ドル」などと声をかけてくる人もいる。ここまで安いのは無認可のもの。別に旅行者が罰せられるわけではないが、価格なりのものでしかないことが多い。
声をかけてきた女性の弟らしきマッチョな男性も加わってすぐ近くの1軒を回るが、そこは留守。次の場所で部屋を見せてもらい、少し話をして名刺をもらって帰ろうとしたら、案内役の2人が「うちに遊びに来い」という。ま、キューバの一般家庭を見るのもよかろうと思ってそこへ行く。と、留守だった1軒目の向かいだった。
彼らの家に入ると、弟の方が小部屋に入って何か捧げ物をしている。聞くと、キューバの民間信仰だった。アフリカの影響が強く、彼は「Afro-cubanの宗教だ」と話をしていた。どれがご本尊か分からないぐらい、たくさんの物がある。ツボや木彫りの彫刻、そんなものまであって、はたから見るとごっちゃな印象。それでも彼は熱心に祈っていた。
女性が「案内したんだからビールぐらいごちそうして」というので2人分出そうとしたら、3本分という。まあそれくらいはいいかと思ってドル札を探していると、5ドル札が見えたらしく、「やっぱり5本」という。ビールは大体1本1ドル弱。いいかげんにしろと思って3枚だけ1ドル札を出して「これだけ」と言っておく。彼女が「自宅に来い」と言ったのは、自宅を見せたいからではなくてこの「謝礼」を受け取るのが目的だったことははっきりしたので、早々にその家を出る。
通りをぶらついている時に見かけたレストランに入る。ナポリタンスパゲティが1.6ドルと格安だ。入ってみるとだれも案内しない。テーブルについてもメニューを持ってこない。まあ社会主義国の安レストランだからと思って辛抱強く待つ。やっぱりナポリタンにしようと注文しようとしたらあっさりと「それはない」。じゃあカルボナーラでもいいや。「それもない」。じゃぁサンドイッチで我慢しよう。「それもない」。プチ・ぶち切れ状態になり、じゃあ何ならあるんだ。「ピザしかない」。それならそうと最初から言え。
かなり時間がかかって、最初に頼んだビールをもう飲み干しそうになって出てきた「ピザ」と称するもの。それはイメージするピザとは似て非なるものだった。パン生地の上に乗っかったチーズとケチャップ。それが人肌程度に温められたもの。かじってみると妙にケチャップの味がして、そしてぬるんとしている。これがキューバのピザなのだろうか。少なくともサクサク感、熱々感がない。うーん。欲求不満。
夕食はその欲求不満を解消しようと、Viejaのレストランでコース料理を頼む。ポークチョップ、豆の煮物、デザートまでついて14ドル。高いけどバンド付きだし、雰囲気代も込みだと思えばまあこんなもんか。
キューバでは、メニューにあっても実際はないものも多い。経験上、牛(res)がまずほとんどない。豚(cerdo)はまだある方で、鶏(pollo)ならあることがほとんど。生野菜も高級品。パスタもあんまりない。魚はある場合とない場合が半々ぐらい。レストランに入って、最初に「これとこれは可能」という場合はまだ親切。間違っても「これとこれは不可能」というのではない。つまり、メニューに載っている数多くの料理の中で、できる料理の方が少ないのだ。それならメニューに載せるなと言いたくなる。当然、高級レストランはこの限りにあらず。
旅の楽しみの1つである食事に関しては、あまりキューバでは期待できない。そもそも物資が少ないうえに、「参った」と泣かされるようなうまい料理にはなかなか出会えない。
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