1月8日
わらしべ長者
昨日が美術館/博物館の日なら、きょうは土産物物色の1日にしよう。
と思って昨夜は寝た。朝、すっきり目が覚めて出かけようとしたらリビングのソファに女性が寝ていた。前のcasaに私を迎えに来た女性だ。そしてしきりに「待て」という仕草をして、何かをスペイン語で必死になって説明している。「Amigo」だとか「Hoy(=today)」という単語だけ分かる。いや〜な予感がする。身振り手振りから想像するところによると、私はまたここを追い出されるらしい。「友人がきょう来る」というような話らしい。ともかくまた知り合いの家を紹介するから、というような雰囲気だ。
わずか2軒隣の家に連れられていく。ここは3階。そして英語を話すJorgeに引き合わされる。彼の通訳でやっと事情がわかった。「新年のお祝いでおじさんがきょう来るのを忘れていた」という事情らしい。しかしキューバの人は、物忘れが激しいのか、いい加減なのか、それとも約束を守れないことが分かっても安請け合いしてしまうのか。とにかく迷惑この上ない。
ただ、今までいた部屋よりもJorgeの部屋の方が景色がいいし、何より英語を話す人がいるのが心強い。まああと1泊分だけだからと思い、引っ越しに同意する。Jorgeが部屋を準備するので、小1時間ほどしたらまた戻ってきてほしいと言うので、Habana Viejaの方へぶらぶら歩く。これまで何度も通った道。何度ものぞいた店を再度確認して、土産物購入に備える。
先日、おばちゃんがおぼれた堤防の上に座ってのんびり海を眺める。ハバナの旅ももう終わりが見えてきた。
しばらくして戻ると、Jorgeが「うちは断水している。母の家が空いているかどうか一緒に確認しに行こう」と焦っている。しかし断水なんて急に始まるのか。ハテナマークが頭の中でうずまくが、黙ってついて行く。
母の家とは、このあたりで最高のマンション7階に住むMargoだった。部屋からはおばちゃんが溺れた海が一望。灯台も、ロータリーも、これまで歩いていた道もすべて見える素敵な部屋。Margoは上品なおばさまという感じで、この年にして英語が完璧。にこやかだ。ちゃんとパスポートナンバーも控えているし、初めてCasa Particularの認可のシールもドアに見つけた。青いトライアングルが2つ、上を向いているようなもの。現在泊まっている人が午後1時半まで権利があるので、それ以降に再度来てくれと言われる。その間に土産物を調達しようと出かけようとしたら、「その荷物の持ち方じゃだめ」とわざわざ注意してくれる。親切だ。
部屋を後にし、土産物をたくさん売っているブロックに歩いていて一人でおかしくなる。「私ってわらしべ長者」。どんどん部屋を移っていって、最後の最後に最高の部屋に出会った。これですべて同じ料金というのが不思議だが、しかし景色と英語と人柄と。自分で選んだわけではなく、勝手にここにたどり着いたのがおかしい。
旧市街海側にTaconという通りがあり、ここは土産物の屋台が並ぶフリーマーケットとなっている。ここをぐるっと回る。絵、粘土人形、アクセサリー、布地、木彫りの人形、マラカスなどの楽器、その他もろもろ。しかし他の国に比べて、素朴さとは言い難い素人作業の物も多い。フォークやスプーンを加工して作ったアクセサリーもあった。物がないなかで、なんとかしようという感じなのだろう。
途中、スーパーで買ったジュースを飲みながら、ひたすら品定め。そして欲しいものがあると値段交渉。ほとんど値引きは可能だった。観光客がひしめく狭い通路なのに、そんなところでも「ハマキ、ハマキ」と声をかけてくるやつがいる。葉巻を買うならちゃんとしたところで買うって。一通りそろえたころには午後もかなり深くなっていた。
Lonely Planetお勧めのレストランAsociation Canaria de Cubaを探す。文化団体の食堂なのだが、格安でそこそこおいしいらしい。結構あっさり見つけて、テーブルにつくとメニューは全部スペイン語。店員は英語をまったく解しない。苦闘しながら選んだのはまたポークチョップ。それにライス。Bucaneroビールをつける。うわぉ、でっかいポーク。びっくりするような物が出てきた。
食べ終えたら何も言わないのに「フラン?」と聞いてきた。そう、周りのテーブルでみんな頼んでいたので、それを何というのか、Lonely Planetの巻末のスペイン語特集で調べていたのだ。こんなところでも私がデザート好きなことがばれたのか?単にうらやましそうな顔をしていたのか?
出てきたプリン。カラメルが甘くそしてほろにがく。プリンは卵の味がしっかり。しかししつこくない。これでわずか50セント。すべて合わせても3.4ドルという破格値だ。もっと早く知っていれば通ったものを。当然、プリンを食べに。
これまで書きためた絵葉書を出そうと郵便局へ。Lonely Planetでは50セントとなっていたが、値上がりしたようで、アメリカまで65、ヨーロッパ75、そして日本が85セントだった。残念ながら65セントだけがゲバラの切手。85セントは普通の切手だった。
マンションのエレベータには、シフト制でエレベータおばさん、おじさん、兄ちゃんがいる。行きたい階を告げるとボタンを押してくれる。それぐらい、自分でもできるのだけれど、これが彼らの仕事なのだから仕方ない。ボタンを押したら事務用の灰色の椅子に座っているだけ。これも社会主義なのか。
Margoがコーヒーを入れてくれた。甘いエスプレッソ。きょうは冷え込んでいる。でも何だか居心地がいい。
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