天気は快晴。バックにあるワイナピチュ(=若い峰)もよく見える。きょうはまずガイドについて、マチュピチュの見どころを押さえていく。太陽の神殿、インティワタナ、コンドルの神殿などを見て回る。石組みなどはすでにこれまでの遺跡で見ておなじみのものだったから、それほどまでは心動かされなかったけど、こんなジャングルの山の上を切り開いて、こんな急斜面に段々畑を作って、こんな大規模な仕事をする動機がどこから来るのか。ローマやアテネを見た時と同じ感慨に襲われる。
ここはすでにアマゾンに近く、ジャングルと言っていいほど。盆地、温帯のイメージのあるインカ帝国とはちょっと違う。やはり特別な場所だったのか。
ガイドのビクトリアは自身の文化に誇りを持っており、ことインカの話になると長広舌になる。マチュピチュは1911年、アメリカ人探検家ハイラム・ビンガムによって「発見」されたことになっている。発見時、彼は手柄をひとりじめしようとここにはだれも住んでいないということにしたが、実は2家族が住んでいて、段々畑の50%ほどを耕作していたという。彼はインカ最後の都「ビルカバンバ」がここであると主張したが、それにしては黄金財宝がなく、がっくりだったとか。なんだかコロンブスを彷佛とさせる話だ。
「歩き方」でもビルカバンバがどこにあるか、というような書き方になっているが、実は1940年代にここからさらに40キロほど進んだところにビルカバンバは発見されている。ただしマチュピチュほど大規模ではなく、やはり急造のものらしい。クスコでも「インカ道を巡ってビルカバンバまでのトレッキング」などの案内を見たから、やはりビルカバンバは発見されている。
そこからも黄金財宝は見つかっていないため、現在の謎は、その所在と、このマチュピチュの名前だそうだ。マチュピチュというのはこの遺跡がある山の名前にすぎず、本当の都市の名前は分かっていないし、もうすでに分かりようもないらしい。マチュピチュをとりまくこんな謎がこの遺跡の魅力の一部なのだろう。
なぜここに。3方をウルバンバ川に囲まれ、その外側をやや高い山に囲まれ、さらにその向こうに雪をいただいた山に囲まれている。インカの人々にとって特別な意味を持つ山だったらしい。見つかったミイラの70%が女性だったことから、インカの人々がここを捨てる際、足手まといになる女性を殺したのだとか、秘密を守るために殺したのだとか、いろんな説がある。なんでそういうミステリーめいた話の方向に持って行くのか。単にここには女性が多く住むような制度になっていたとは考えられないか。男性は必要最小限だったと。
きょうはとりあえずざっと一通り見るだけ。バスでふもとに降りて行く。そう、有名な「グッバイボーイ」とともに。
いい湯だな〜
私が今回の旅で最後までこだわったこと。それはマチュピチュにできる限り長くいること、そしてアグアス・カリエンテスで1泊することだった。そう、温泉好きの私にとって、アメリカ生活で唯一物足りないのは、温泉にゆっくりつかれないこと。まさかマチュピチュの近くに温泉があるなんて。日本式に言うと「マチュピチュ温泉」。
さっそく温泉に入りに行く。宿の前の道を遡る。途中で料金所があり、5ソル払う。さらに川に沿って上ると、湯気が見えてきた。川沿いにある混浴の共同露天風呂。日本にもよくあるタイプね。
混浴といっても、当然、水着着用(な〜んだ〜)。大きなプールのような浴槽は大人が立ってちょうどぐらいの深さ。下には砂利がひいてある。日本の湯に比べるとかなりぬるい。で、砂利に半分足をうずめると、遠赤外線の効用か、かなり足下がぽかぽかする。これはおすすめ。
座って入るにはその他の小さな浴槽もあるが、私の入った時は家族連れが占領していて入れなかった。見たところ地元の人もいるが欧米系の若者が多い。「歩き方」に泉質は不明とあったが、しっかり成分分析表があった。それによると、弱酸性で、炭酸カルシウムなどがやや多めに含まれていた。ま、味も臭いもうすいから、日本で言うところの単純泉みたいなもんだろう。
「泳ぐな」と書いてあるのに、大人までが泳いでいる。そんな騒ぎにはおかまいなく、私はただじっと山の緑と空の青さを見つめている。本当は星が見えるまでいたかったが、いくらぬるいとはいえ、あまり長く入っていたので、いいかげんゆだってくる。2時間、ほとんど湯から出ることもなくつかっていた私。そんなに温泉が好きなのか?
脳しんとうを起こしたハチドリ
露天風呂に行く前、ホテルを出ようとしたら、私のすぐわきの窓ガラスに何かがぶつかって落ちた。何だろうと思ってみたらハチドリだった。まるでカナブンみたいだな。脳しんとうを起こしているらしく、手でつかんでも逃げられない。「あれれ〜」とでも言っているようにまぶたを重そうに開けようとしているのがかわいい。
鳥というよりも大きめの虫に近い感じ。しかししっかり羽毛はあるし、足もやはり鳥の足だし。何だか変わった生き物だ。まさかさわれるとは思っていなかった。しばらくすると回復したらしく、それでも何だか頼りないはばたきで森に帰って行った。
ついでに
これがほぼ絶滅寸前だという「Inca Dog」。顔と尻尾には長い毛が生えているが、それ以外の胴体や前後の脚などには毛がない。
都会の人には人気が出そうだが、それ以前に、なぜだか悲し気な顔をしていると思えるのは気のせいか。
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