上り始めてすぐに、マチュピチュとワイナピチュを結ぶ稜線を歩く。ここで突風に吹かれたり地震があったら一発だなあ〜なんて不吉なことを考えながら恐る恐る歩く。そこを過ぎると、山にへばりつくような階段ばかり。一体どこまで続くのか。今頃になって、先にインティクンプへ行ったことを後悔する。こっちの方が格段に体力を使う。すでに足はガクガクになりつつある。ふもとで買って来た水分はすでに飲んでしまった。飴もなめた。ある意味、不利な状況で上っていく。
沖縄出身で今はカナダに住んでいるというトウズ夫妻、そしてエクアドル出身でハワイに住んでいるおじさんと励ましあいながら進む。気温も上がり始め、また湿気も多い。かなり汗が出る。標高も上がっているので、呼吸が苦しくなってくる。ときおり手すり用のロープが張ってある部分がある。「ここで落ちた人がいるのだな」などとまたしても考える。
頂上に近付くにつれ、階段はさらに細く、急になる。こんなところにも段々畑がある。インカの人は何を考えているんだ。ほとんど耕す場所もないし、あっても作物は育つのか。どうやって造ったのか。どうやって耕作したのか。ほんと、不思議だ。
そしてこんなところにも、例の石組みを使った建物跡がある。いったい、どうやって組み上げたのか。天然の岩でできた洞くつをくぐって、少し上るとやっと頂上だ。頂上に何かあると思っていたら、意外に単なる自然の岩のままだった。しかし切り立っている。足を滑らせたら。とまた考える。
頂上では15人ほどがそれぞれの岩に座りながらマチュピチュを眺めている。相変わらず雲は晴れず、見えたり見えなかったり。高い場所にあるマチュピチュをさらに見下ろすのは変な感じだ。上りも大変だが、下りも大変なはずなので、笑っている足をなんとかなだめようと、しばらく休憩。
中にはトライアスロン系の猛者もいて、下からここまで23分で来たという人もいる。そして彼はまたすぐ下って行った。きっと記録を狙っているのだろう。しかし普通に登れば1時間きっちりかかる。
午後になると風が吹くと聞かされていたので、正午前に下り始める。いやぁ、これも結構恐い。登りはまだ空を見ていればよかったが、今回は嫌でも下界が視界に入ってくる。白く細く流れるウルバンバ川。切り立った崖。地滑りしたような跡。あーこわ。
約40分で、何とか管理小屋へ。記事にならなくて済んだ。「日本人旅行者、ワイナピチュで滑落死」なんて見出し、シャレになりまへん。ノートに自分の名前を書く時、ほっとした。と同時に疲れもどっと襲って来た。
遺跡の真ん中の広場にある大きな石の上で、大の字になって寝転がる。午後になって晴れて来て、太陽が皮膚を焼くのが分かる。もう少ししか自由時間はないので、回っておきたいところを再度回っておくことにする。
グッバイボーイ
クスコへ戻る列車は3時発なので、マチュピチュを2時過ぎには出ていないと乗り遅れる。2時頃のバスに乗り込む。走り出していくつか目の曲り角で、チャスキの衣装を着た少年が「グーーーバーーーイ」と手を振る。またしばらく下ったところでも同じ少年が「グーーーバーーーイ」。事情を知らない欧米人はさかんに不思議がっている。Lonely Planetには載っていないのかな。このつづら折りには、歩行者用の直線的に下る石段があって、彼はそれを下りながら同じバスに向かって手を振っているのだ。
昨日の少年は笑顔があり、声も張りのある高音だったが、きょうは笑顔もないしやや疲れた声。一番下まで降りて来たら、バスの運転手がいったん車を止めて彼を中に入れる。ま、グルの商売と言えばそうだな。そして乗客からチップをもらう。聞くと1日2往復が限度だそうだ。彼はきっと2往復目だったんだろう。
クスコへ
列車は定刻通り出発。ウルバンバ川を今度はクスコ方面に遡って行く。ゆっくり進む列車。1時間半で一昨日泊まったオリャンタイタンボ。2時間半でHuanocondoという駅を過ぎてからは、かなり広い盆地に出た。一面の畑。かなり肥沃な土地なのだろう。所々にアドベで造った茶色い民家。草をはむリャマ、アルパカ、牛、馬、羊、ブタ。標高をかせぐために何度かスイッチバックをして、夕闇を追いながらクスコを目指す。
いよいよ真っ暗になった時、クスコのある盆地に出る。盆地一面に広がるオレンジ色の光。運転手もわざわざ列車内の照明をすべて消すサービス。乗客から「ほー」とも「おー」ともつかない声が漏れる。クスコまで4時間。きょうは疲労しました。
それでも腹は減る。ホテルに着いてすぐ、フォルクローレを聞けるレストランに入り、音楽を聞きながらダンスを見ながら地元の料理を食べる。かなりきついというピスコサワーをいう酒を飲んでいたら、急に酔いが回って来た。疲れもあるし標高もあるし。ここは3360m。マチュピチュの2200mとは違うわな。部屋に帰ったらバタンキュー。
<-- 前日に戻る Peruトップ 次の日に進む-->
Do you have any questions? Why not ask me? |