1月13日
まじっすか
きょうはリマの市内観光をする予定だ。旅行社からもらった日程表には、「午前中に市内観光、昼ごろ解散、あとは自由時間」とある。何時に迎えが来るのか、前夜からまるで連絡がない。普通、市内観光といえば2、3時間が目安だろうから、逆算すると9時か10時ごろには来るはず。念のため6時半から起きて支度をする。
暇だったのでホテルのケーブルテレビを見ていると、NHKもあった。高齢化・少子化についてののんびりした番組だった。別のチャンネルでは、ポケモンをやっていた。ピカチューの声だけはオリジナルで、他は当然スペイン語。おそるべし、ピカチュー。
10時半を過ぎても何も連絡がないのは、あきらかにおかしい。旅行社に電話してみる。しかし呼び出し音はなるもののだれも出ない。きょうは日曜日。おそらく休んでいるのだろう。それではと、担当者の携帯電話に電話してみる。スペイン語で何か流れる。しかしさっぱり分からない。状況から考えて、留守電サービスか圏外のアナウンスだろう。こちとら金は払っている。このまま引き下がれない。
名刺に御丁寧に自宅の電話番号まで載っていたので、フロントに頼んでかけてもらい、担当者を呼び出してもらう。出て来た彼女、いかにも今、起きたという声をしている。「どうした、旅を楽しんでいるか?」とのんきにのたまう。「日程表では午前中となっているけど、迎えにも来ないのはどうしたことか」と、アメリカ仕込みの交渉力で切り出してみる。するととたんに慌てる彼女。「そ、そ、それは午後の間違い。そう、午後だよ、午後」と。どう見返してみても午前中のはず。しかしそれはいいだろう。午後に来るのなら。「そう、2時、2時には必ず迎えに行くから」。人のいい私は、その言葉を信じることにした。
そうと決まればホテルにいる理由はない。土産物を買いたいし、見ておきたいものもある。急いでホテルを出て、新市街ミラ・フローレスへ。土産物ストリートへ行くが、これまた個性のないものばかり。なんでこう画一的なのかな。もっと個性を出したらいいのに。そんなことをぶつぶつ言いながら、何とか見繕う。
ええ加減にしいや
品定めに結構手間取り、汗をふきふきホテルに急ぐ。着いてみればジャスト2時。まだ迎えは来ていない。ほっとしながらホテルのロビーで待つ。しかし来ない。なんだかな〜。2時20分、ガイドと称する女性から電話。あと10分で行くと。しかし来ない。おいおい。結局来たのは2時40分。私は6時には空港に行くので、時間は大丈夫かと聞くと、大丈夫だと答える。意地悪にも、「いつ私の参加を知ったのか」と聞くと、「30分前」と正直な答え。もう〜〜〜。
それはともかく、このガイドに罪はない。気持ちを入れ替えて観光しようとするが、そのペースののろいこと、のろいこと。住宅地の真ん中の何の変哲もない公園で観光だという。ここで何を見ろというの。世界遺産にも指定されている旧市街へ回る。しかし目につくのは壊れかけた建物。テラスが見物だと言うが、ペンキで何度も塗り重ねているため、重厚さよりも安っぽさが目立つ。
コロニアルな建物をいちいち説明してくれるが、別に何の感動もない。う〜ん、こんなことならこだわるんじゃなかったな。サン・フランシスコ教会のカタコンベ(地下墓所)にも入る。しかし、じめじめしているしいかにも観光用という感じ。教会内部も見るべきものは特にない。最後は「恋人たちの公園」。この時点で5時過ぎ。帰る時間が気になってくだんのガイドに「6時までに帰れるか」と聞くと、「そんなの保証できない。バスで帰るのがいやなら自分でタクシーで帰れば」だって。お〜い、大丈夫と言ったのは君だぞ。
旅行社の彼女といい、ガイドの彼女といい、どうしてこう言うことが違うんだ。これがリマ方式なのか。ちゃんと仕事しようぜ。日本だと失業するぞ、ほんと。
きわめつけ
ホテルには何とか6時前に着く。あわててチェックアウト。ばたばたと空港に向かう。結局、先の市内観光で撮った写真は2枚だけ。どれだけ心引かれなかったかが分かる。
混雑を見越してフライトの3時間前に空港には入っていたが、コンチネンタルのカウンターに行ってびっくり。なんとも長い行列がすでにできている。仕方なく並ぶ。チェックインの前にセキュリティ・チェックがあり、チェックイン作業ものんびりしているのでまったく列が動かない。並ぶこと40分以上。やっと自分の番。
私は荷物も少ないし、電子チケットだったので手続きもスムース。席を見ると11Aだった。私の前に並んでいた人たちは一体、どこに座ったのか。あれだけたくさんいたのに、私が11の席とはこれいかに。
混雑の渦中にいたくはないので、すぐにゲートに向かう。途中、どうしても買っておきたかったものを買っておく。そう、それはインカコーラ。あのキッチュな黄色い液体が妙に気に入ってしまっている。空港価格で6.2ソル。市価の4倍程度。ぎょえー。
ゲート前のソファに座っていたら、ここでもセキュリティ・チェックをやるという。私を担当した若い男性。土産物の1つ1つ、バッグの中のすべてのものを洗いざらい出させて、いちいち目的を聞く。水着を見ては、「どこで泳いだ」(そんなん勝手やろ!セキュリティと関係あんのか!)。バッグを固定するチェーンを見ては「これは何に使う」(見たら分かるやろ!あほか!)。挙げ句の果ては土産物を、せっかく包装されているものをすべて開かせる。おい、君。君に何の権限があってそんなことをするのか。「申し訳ないがこれからチェックする。御協力を」とのアナウンスすらなかったぞ。しかもすべて出させたあとはボディ・チェックに靴のチェック。まったく同じ手口でテロを試みるばかな犯罪者はいないぞ、普通。それに私はこんなところで死にたくないし、死ねない。顔を見て判断しろよ。あ、そうか、逆に顔で判断されたのかな。日焼けで鼻の頭が亀の甲羅のように割れていたしな。
ともかく。最終日のリマでさんざんな目に遭って、ただでさえ悪かったリマの印象は決定的に地に堕ちた。今度来る機会があっても、リマになんか目もくれないでいてやる。
定刻を過ぎても出発しない飛行機。何でもオーバーブッキングで、席を譲ってくれる人を探しているのだとか。これがアメリカの航空会社。「飛べばいいんでしょ」「着けばいいんでしょ」がモットー。機内サービスも「Coffee? Tea?」と吐き捨てるように聞いてくる乗務員。「お茶がいいですか。それともコーヒーはいかがですか」なんて丁寧な言葉で接してくる日本の航空会社のスッチーさんが懐かしい。こうなったらもう寝るだけ。起きたらニューヨークだろう。
<-- 前日に戻る Peruトップ 次の日に進む-->
|